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1年の彼氏不在

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「え?留学?どこに?」

 

「オーストラリアだよ。ダメ?」

 

大学近くのカフェ、果歩は恋人である友哉の切り出した話に少し驚きの表情を見せていた。

 

「ダメじゃないけど……。」

 

「語学留学したいって、前から思ってたんだよ。バイトで留学資金、やっと貯まったんだ。」

 

友哉はまじめな性格だ、留学資金は親には頼らず自力で何とかしようと思っていたのだろう。

 

「そういえば友哉、最近デートもしないでず〜っとバイトしてたもんね〜。」

 

果歩は少し怒ったようにほっぺたを膨らましてみせた。
「ごめんごめん、そのくらいバイトしないと貯まらなかったから。そのかわり、向こう行く前に果歩の行きたいところに遊びに連れて行ってあげるからさ。」

 

その言葉を聞いて果歩の目が輝きだした。

 

「え?ホント?やった〜!どこにしよっかなぁ。」

 

「果歩の好きなところでいいよ。」

 

留学の事を果歩に話すのには少し不安があった友哉だが、今の果歩の表情を見てひと安心だ。なにせ長い期間会えなく・・・。

 

「でも、友哉えらいね。自分だけでお金貯めて1人で留学だなんて。私1人で海外なんて行けないなぁ。」

 

割かし社交的で行動力のある友哉に比べ、普段は大人しく、人見知りもする方である果歩にとっては留学して外国人と交流して、なんてとてもできない。

 

「最近は留学する人も少なくなっているみたいだけどね、でもやっぱり外国で生活していろんな人と交流できればこれからの考え方も視野が広がると思うしね。」

 

コーヒーを飲みながらそう語る友哉の姿は、果歩には非常に頼もしく見えた。

 

「しっかりしてるなぁ、友哉は。」

 

「じゃあ果歩、俺が留学するのOK?」

 

「うん、もちろん!友哉がいなくなるのは寂しいけど日本から応援してるよ。」

 

果歩のその言葉を聞き友哉の顔はパァっと明るくなった。

 

「ありがとう、向こうに行ったら毎日メールするから。よかった、果歩嫌がるかなぁって思ったけど、安心したよ」

 

「私そんなに心狭くないよ〜だ。楽しんでおいでよ、私もこっちで何かにチャレンジでもしようかなぁ。」

 

「俺がいなくても大丈夫か?果歩、結構抜けてるとこあるもんなぁ。」

 

「え〜!大丈夫だよ、友哉がいなくてもちゃんとやっていきます。」

 

「じゃあいつもみたいに大学のレポート手伝ってぇ!ってメールしてくるなよ。」

 

「も〜大丈夫だよっ。」

 

友哉からの留学発表も終わり、注文したケーキを食べながら2人は今度どこに遊びに行くかを楽しそうに話していた。近頃は友哉がバイトで忙しかったのもあり、こうして2人でゆっくり話すのも久しぶりだ。

 

そんな中、果歩がふと思い出したように友哉に質問する。

 

「友哉、ところでどのくらい向こうにいるつもりなの?」

 

「1年だよ。」

 

「え〜!!!1年も!?」

急な寂しさ

付き合い始めて1年近くなる友哉と果歩、お互いに異性と付き合うのは初めてだった。

 

好きになったのは友哉の方からで、互いに大学生になりたての出会った当初は、果歩からすれば友哉はひょろっとした外見からなんとなく頼りない印象であったが、いざ話してみれば友哉は外見の印象とは異なり、しっかりとした芯のあるまじめな性格と、周りの人たちにも気を配れるやさしさを持った男性なんだと、果歩の中で友哉の印象は変化していく。

 

そして果歩はそんな友哉に惹かれていった。

 

友哉は女性にアプローチするのは苦手だったが、不器用なりにも果歩には気持が伝わっていたようだ。

 

友哉と果歩が付き合いだした事で周囲に驚く者が多かったのは仕方のない事かもしれない、外見が可愛らしく性格もやさしい果歩には言い寄ってくる男は結構いた、一方友哉は頭もいいし性格もよく友達が多かったが、男性にしては小さい身体と決してかっこいいとは言えない顔立ちであったため全く異性からはモテなかった。

 

しかし、しっかり者の友哉と可愛くてやさしいけどちょっと天然の入っている果歩の組み合わせはいつしか学部内ではお似合いのカップルになっていた。

 

 

 

 

「ハァ、行っちゃった……もう向こうに着いてるかな。」

 

1人暮らしをしているアパートの自分部屋で写真を見ながらため息をつく果歩。その写真の中には楽しそうにミッキーマウスの横で笑っている友哉と果歩の姿がある。

 

(楽しかったなぁ、ディズニーランド……)

 

友哉がオーストラリアに行く前の最後のデート、2泊3日のデートは果歩にとって実に充実したもので、友哉といっしょにいるのが幸せだと再認識したデートだった。

 

(寂しくなるなぁ……一年か……)

 

今の時代、携帯電話やパソコンでいつでもメールはできるが電話はお金がかかるからめったにできないし、長電話もできない。
一年くらい別に平気だと思っていた果歩だが、友哉が海外に発ってから急に寂しさを感じ始める、最後のデートが楽しかっただけにそれは想像してたよりも大きなものだった。

 

夕日が差し込むシーンとした自分の部屋で果歩は友哉と撮った写真をしばらく眺めていた。

接近

 

「そっかぁ、友哉君もう行っちゃたんだぁ、果歩寂しくなるね。」

 

「うん……でもメール毎日するって約束したし。」

 

大学の食堂、果歩とランチをしながらそう話す相手は友達の知子だ。

 

「でも心配よねぇ、1年だもんねぇ」

 

「え?なにが心配なの?」

 

果歩と知子は卓球サークルで出会った仲のいい友達、よくこうして大学の食堂でランチを食べたり、大学以外でも買い物に行ったり食事に行ったり、恋愛の相談もよくする仲である。

 

「浮気よ、向こうの学校って日本人も結構いるって聞くじゃない?あ、相手が日本人とは限らないか、すっごい綺麗な金髪の子とかいたりして。」

 

「う、浮気なんて!浮気なんて友哉がするわけないよ……もう!何言ってるの知子ちゃん。」

 

知子は冗談のつもりだが果歩は結構動揺した様子。

 

「冗談冗談!フフッでも、友哉君みたいなまじめな人が意外と・・・だったりして。」

 

悪戯っぽく笑う知子、こうやってなんでも真に受けてしまう果歩をからかうのが好きなのだ。
「も〜ないよ、友哉に限って。それより知子ちゃん、私バイト増やそうかなって思ってるんだけど、友哉は1年いないし、こうなったらいっぱいお金貯めようかなって思って。」

 

「へぇ、でもたしか今果歩がバイトしてる雑貨屋さんってあんまり給料良くないんじゃなかった?お店は可愛いけど。」

 

果歩は大学に入ってからは前々から気に入っていた可愛らしい雑貨屋で週三日アルバイトをしていた。

 

「うん、でも雑貨屋さんのバイトは続けたいから他の3日間に別のバイト入れようかと思って。」

 

「え〜!じゃあ果歩週6日もバイトするの?きっついよ〜。大丈夫?」

 

確かに大学生の中にはバイトのし過ぎで大学の勉学と両立ができなくなっている学生もいる。

 

「ん〜でも友哉もいっぱいバイトしてたけど頑張って大学と両立させてたし、私もなんか頑張ってみたいの。ねぇ、知子ちゃんどっかいいとこ知らない?できれば時給が良い所。」

 

「ん〜いいとこねぇ」

 

腕を組んで考える知子。

 

「ん〜まぁ果歩は可愛いしやろうと思えばすっごい稼げる仕事はあるわよねぇ。フフッ、日給何万ももらえる仕事。」

 

知子はまた悪戯っぽく笑みを浮かべて言った。

 

「え〜日給何万も!?・・・でもそれってすっごく如何わしくない?」

 

「フフッ、意外と果歩はそういうの向いてるかもねぇ。果歩ってムッツリだし。」

 

知子のその言葉を聞いて果歩は顔を赤くする。

 

「ち、ちが……もぉ何言ってるの知子ちゃん、もっと普通のバイトでだよぉ。」

 

「フフッ、冗談よ。でも動揺してるとこ見るとムッツリは図星でしょ?」

 

「違うってば!!」

 

恥ずかしそうに顔を真っ赤にして怒る果歩と、それを面白がって笑う知子。

 

すると、そんな2人に近づいてくる人物がいた。

アルバイト

「いいバイトならあるわよ。」

 

ふとその声のする方に顔を向ける果歩と知子。

 

「あっ!秋絵先輩!」

 

そこには知子と同じく卓球サークルで知り合った先輩の秋絵がランチプレートを持って立っていた。

 

秋絵は大学内では有名な美貌の持ち主で、それでいて勉強もでき、しっかりしていた。

 

そのため秋絵を慕う後輩も多く、果歩と知子にとってもそんな秋絵は尊敬や憧れの対象になっていたのだ。

 

「ここいいかな?」

 

「はい、どうぞ」

 

知子はそう返事をして奥の席に移動して、手前の席を秋絵に譲った。

 

「ありがとう。・・・相変わらず仲良しね、知子ちゃんと果歩ちゃん。」

 

「秋絵先輩が食堂なんて珍しいですね。」

 

果歩は溢れんばかりの笑顔で秋絵に聞いた。

 

果歩の秋絵へ憧れの念は結構なもので、自分はドジでおっちょこちょいな所があると自覚がしている果歩にとって、秋絵のようにしっかりしていて完璧に見えるかっこいい美人は大きな目標でもあるのだ。

 

もちろん果歩もルックスでは大学内の男子学生に人気はあった、しかしそれは秋絵のように「かっこいい」「美人」というタイプではなく「可愛らしい」というタイプだろうか・・・。

 

「今日はちょっと朝寝坊しちゃって・・・お弁当作る時間がなかったのよ。」

 

「え〜秋絵先輩でも寝坊とかするんですね。」

 

知子は意外といった表情で言った。

 

「でもでも、毎日お弁当作ってるなんてやっぱりすごいですね!秋絵先輩。美人で頭も良くてスポーツもできて、料理もできて。」

 

尊敬の眼差しで目をキラキラさせながら話す果歩。

 

「お弁当といってもいつも簡単なものよ。」

 

「私たちなんて毎日食堂で済ませちゃってるし、果歩に限ってはお寝坊は日常茶飯事だしね〜。」

 

知子はまた悪戯っぽく笑いながら言った。

 

「も〜知子ちゃんイジワル〜・・・確かにそうだけどぉ・・・。」

 

そんな果歩と知子のやりとりを秋絵はニコニコしながら見ている。

 

「あ、そうそう、果歩ちゃんアルバイト探してるの?」

 

思い出したように秋絵が話をきり出した。

スポーツクラブ

「え・・・あ、はい!今は週3日バイトしてるんですけど、他の3日で別のバイトしようかなって・・・。」

 

「週6日アルバイトかぁ、頑張るね。それで・・・実は私の知り合いでスポーツジムを経営してる人がいるんだけど、その人が今ちょうどアルバイト欲しがっているのよ。そしたらちょうど今知子ちゃんと果歩ちゃんがアルバイトの話してるの聞こえたから、果歩ちゃんどうかなって思って。」

 

「スポーツジム・・・ですか、スポーツジムのバイトってどういう事するんですか?」

 

あの秋絵が紹介してくれる所だ、きっとちゃんとした所なんだと思った果歩だが、スポーツジムと聞いて少
し不安になったのは、果歩は運動神経にはあまり自身がない、それに重いものを運んだりするのは非力な自分には向いてないと思ったからだ。

 

「うん、詳しくはわからないけど、多分受付とかだと思うけど。女の子に重いもの持たせたりって事はないと思うわよ。トミタスポーツっていう所なんだけど・・・ちなみに時給結構いいわよ。」

 

その話を聞いて果歩の顔がパァっと明るくなる、時給がいいに越した事はない。

 

「わぁ!そうなんですかぁ!ん〜どうしようかなぁ・・・。」

 

「やってみなよ果歩、秋絵先輩の紹介だし、時給いいなら申し分ないし。それに、スポーツクラブならかっこいいインストラクターいっぱいいるかもしれないよ。」

 

「それは別にいいけど・・・。やっぱりお金貯めるなら時給高い所の方がいいよね、もうひとつのバイトは好きなことやってるし。」

 

「それじゃ果歩ちゃん、このアルバイトの話前向きに検討してくれるかしら?」

 

「はい、あの・・・あ、じゃあそういう方向で考えたいと思います・・・。」

 

まだ少し迷いはあるもののせっかく秋絵からもらった話だ、とっさに果歩は承諾の方向で返事をしてしまった。

 

「じゃあ私先方に伝えとくから、詳しい事はまた近いうちに連絡するわね。」

 

「は、はい。よろしくお願いします・・。」

 

「それじゃまたね。」

 

そう言って秋絵は食べ終わったランチプレートを持って席を立った。

 

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